職場の禁煙、受動喫煙防止の観点

喫煙に対する法規制

喫煙に対する意識は喫煙者と非喫煙者との間で大きく隔たっています。

非喫煙者の立場で言えば、他のことでは非常に気配りの行き届いた人が、他人に副流煙を吸わせても全然平気だったりするのを見ると、その人がとたんにガサツな人に思えてきたりします。

現在では、2002年に制定された健康増進法により(2003年施行)、徐々に非喫煙者の立場が強まってきています。

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健康増進法

特に注目されるのは、この法律の25条です。

「学校、体育館、病院、劇場、観覧場、集会場、展示場、百貨店、事務所、官公庁施設、飲食店その他の多数の者が利用する施設を管理する者は、これらを利用する者について、受動喫煙を防止するために必要な措置を講ずるように努めなければならない」

つまり、パブリックな施設の管理者は、受動喫煙(室内などで他人のタバコの煙を吸わされること)の防止措置を講じる努力義務があるのです。

努力義務というのは法的に、厳格に義務づけるというのとは違いますので、少し腰がひけた規制ではありますが、政府が受動喫煙対策に関心をもっていることを公に示した意味は大きいと思います。

職場における受動喫煙問題だけをみると、実はすでに労働省(現在の厚生労働省)が「職場における喫煙対策のためのガイドライン」を制定していました。

そして、健康増進法の制定にともない、ガイドラインを見直して、さらなる強化が行われました。

このガイドラインでは、喫煙対策は、労働衛生管理の一環として職場で組織的に取り組むべきこととされています。

具体的な対策としては、全面禁煙と分煙が示されていますが、当面は分煙でよしとする方向性が示されています。

ただし分煙にするときには、喫煙室を設けたうえ、空気清浄機ではなく、タバコの煙が飛散する前に吸引して屋外に排出する機器を設置することを推奨しています。

さらに喫煙対策委員会を設けて、喫煙行動基準等の策定を検討することも呼びかけています。このようにガイドラインでは、かなり細かなことが書かれています。

ただ、嫌煙家からすると気になることも書かれています。

「喫煙対策を円滑に推進するためには、喫煙者と非喫煙者の双方が相互の立場を十分に理解することが必要であること」

嫌煙家からすると、タバコを吸うのは本人が勝手なことをしているのであって、それに対して理解せよというのはいかがなものか、喫煙者に譲歩しすぎではないか、と言いたいところかもしれません。

嫌煙権は社員の権利と言えるのか

法的には、受動喫煙の被害を受けないことが権利といえるかどうかはっきりしていません。

権利というのは法律ではっきりと明示されていることもありますが、裁判所の判断により保障されるということもよくあります。

たとえばプライバシー権は、法律でははっきり書かれていませんが、裁判では法的に保障されています。

嫌煙権も、それを明記した法律上の規定はありませんが、裁判例ではどう扱われているのでしょうか。

かつて岩国市役所の職員が、岩国市に対し、事務室を禁煙にしていないために受動喫煙を余儀なくされ、健康を侵害されているとして、人格権に基づいて事務室を禁煙にすることを求めるとともに、岩国市が事務室を禁煙にしていないことが職員に対する安全配慮義務(生命や健康等を危険から保護するよう配慮する義務)に違反するとして慰謝料請求をしたことがありました。

この事例を見てもわかる通り、受動喫煙により健康被害を受けた社員は、会社が安全配慮義務に違反しているという理由。

また嫌煙権という言葉は使わないまでも、会社が適切な措置をとっていないために社員の人格権が侵害されているという理由により、会社に対して損害賠償を求めることはできそうです。

一般論としてはそうなのです。

ただ、これまでの裁判の結果をみると、会社がそれなりの喫煙対策をとっている限り、それが十分な健康被害防止策となっていないとしても、なかなか賠償責任までは認められないというのも事実です。

現在では前述のガイドラインが会社がとるべき対策の目安となるでしょう。

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