正社員のアルバイトは許される?事例と制限に関する法的ルールとは

パートや派遣のような非正社員であれば、通常の副業は問題ありません。

アルバイトを制限する就業規則の規定は、非正社員には適用されないのが一般的です。

実際、生活のために、複数の会社でのパートをかけもちするということは、それほど珍しいことではありません。

では、どうして正社員だけアルバイトは制限されるのでしょうか。

その主たる理由は、会社は正社員に対しては自社への忠誠を求めるからです。

会社は、正社員で雇った者に対しては、長期的な雇用を保障することを含めて、本人や家族の利益のことを考えていろいろな配慮をします。

その配慮の代償として、正社員には会社に対して忠誠を尽くし、誠実に勤務することを求めるのです。他社で働くということは会社への忠誠に反する行為ということになります。

もちろん正社員側にも言い分はあるでしょう。

「会社に忠誠を尽くすのは勤務時間中だけで十分だろう」。

こうした意見は、それなりに筋が通っていると思えます。

ただ、本当に勤務時間外であれば、働く人は会社から完全に解放されているといってよいでしょうか。私生活の自由は、どこまで社員に保障されているのでしょうか。

参考となる裁判例

この点を考えるうえで、参考となる裁判例があります。

A子さんは建設業を営むB社に事務員として採用されました。

A子さんの勤務時間は、午前8時45分から午後5時15分までであり、勤務時間後は午後6時から午前零時までキャバクラで働いていました。

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ただ、A子さんのやっていた仕事の内容は、最初の1ヶ月少しはホステスや客の出入りのチェック、その後の9ヶ月ほどは会計係でした。

A子さんはその後、キャバクラを辞めています。

厳密な意味では、彼女が風俗産業で働いていたとはいえないでしょう。

ところで、B社の就業規則には「会社の承認を得ないで在籍のまま他に雇われたときには、懲戒処分とする」という規定がありました。

A子さんの夜のアルバイトを知った会社は、彼女の行為はこの就業規則の規定に該当する違反行為であるとして、A子さんを解雇しました。

B社はA子さんの行為は、本来なら一番思い処分である懲戒解雇になるところだけれど、普通解雇にとどめるとして、罪一等を減じました。

しかしA子さんはこの解雇処分を不服として裁判所に訴えを提起しました。

裁判所はA子さんの訴えを退けました。彼女が無断でアルバイトをしたこと自体が会社に対する雇用契約上の信頼関係を破壊するものであること、またアルバイトの内容は軽作業とはいえ長時間にわたるものであったこと、がその理由です。

 

アルバイトの制限に関する法的ルール

ところで、そもそも会社が正社員のアルバイトを制限することについて、法律上、どのようなルールがあるのでしょうか。

実は公務員については、国家公務員法(104条等)や地方公務員法(38条)に基づきアルバイトは許可制となっています。

公務員の無断のアルバイトは法律に違反することになるのです。実際にも、市立病院の医師(地方公務員)が無断で民間病院で診療をして報酬を得ていたことを理由に、法律違反として懲戒処分を受けた例などがあります。

ところが、民間会社の社員については、こうした公務員に関する法律は適用されません。

実は民間会社の社員のアルバイトについては、それを許容するかどうか、許容するとしたときに、どのような条件とするかは、各会社の判断にゆだねられているのです。

現実に、正社員のアルバイトは自由としている会社もありますし、逆にアルバイトを許可制あるいは届出制として規制している会社も、たくさんあります。会社は、アルバイトを厳禁とすることだってできるのです。

ただ会社がアルバイトを制限したとしても、その会社のきまりに違反した場合に、当然に懲戒処分を行うことができるというわけではありません。

懲戒処分の対象となる場合

ではどのような場合であれば、懲戒処分の対象となるのでしょうか。

先程の建設会社の女性社員がキャバクラでアルバイトをしたことが問題となった事例においては、裁判所は、次のように述べています。

労働者がその自由なる時間を精神的肉体的疲労回復のために適度な休養に用いることは、次の労働日における誠実な労働提供のための基礎的条件をなすものであるから、使用者としても労働者の自由な時間の利用について関心を持たざるを得ない、と。

要するに本務の遂行に支障が生じるようなアルバイトであれば、会社はそれを制限としてよいということです。

逆にいうと、社員の行うアルバイトが会社の本務に支障が生じるようなものではなければ、会社はこれを不許可とすることはできませんし、少なくとも懲戒解雇のような重い処分を課すことはできないのです。

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