他人の土地を通らないと公道に出られない!通行料の請求や妨害された場合の対処法
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公道に出たいが通行を妨害されるVS土地の通行料を請求したい
この問題は相続などによって起こる事が多い問題であり、他人の土地に囲まれてしまっているケースです。
下記の図を見て下さい。
他人の土地を通るしか公道に出られません。
このような土地を袋地といいます。
また、ケース①ではAさんのみの私道になっていますが、私道が自分以外のABCDの共有になっている場合もあります。
このようなケースでは、私道の所有者が「他人が自分の土地を通るのが面白くない」と通行を妨害したり、難癖をつけてきたり、通行料を払うように請求してくることがあります。
(1)袋地の方にとっては、
と思うでしょう。
逆に、
(2)私道の所有者にしてみれば、
と思うかもしれません。
このように、袋地に住んでいる方と私道の所有者の間で対立して、トラブルになることも少なくありません。
そこで、ここでは袋地の人は他人の土地を通行する権利があるのか、その際に通行料が発生するのかなどについて紹介します。
目次
袋地の人には他人の私道や他人の土地を通行する権利があるのか?通行料は発生するのか
ケース①と②と分けて説明します。
まずはケース①の私道の場合
本来、私道は、所有者や共有者だけしか利用できないのが原則です。
ただ、この原則に従うと、袋地の方は公道に出ること(公道から自宅に入ること)が不可能です。
それでは生活に支障が出てしまいますね。
ですから、私道を通るしか公道に出ることができない状況のような場合、他人の私道でも通行ができます。
私道の所有者にしてみれば、自分の権利を制限されることになるのです。
また、もしも通行の妨害をしてしまうと、権利を濫用していると判断されます。
価値観を改めていただくしかありません。
次に、ケース②の他人の土地を通行する権利についてです。
まずは法的に見ていきましょう。
第210条
① 他の土地に囲まれて公道に通じない土地の所有者は、公道に至るため、その土地を囲んでいる他の土地を通行することができる。
② 池沼、河川、水路若しくは海を通らなければ公道に至ることができないとき、又は崖があって土地と公道とに著しい高低差があるときも、前項と同様とする。
第212条
第210条の規定による通行権を有する者は、その通行する他の土地の損害に対して償金を支払わなければならない。ただし、通路の開設のために生じた損害に対するものを除き、1年ごとにその償金を支払うことができる。
第213条
① 分割によって公道に通じない土地が生じたときは、その土地の所有者は、公道に至るため、他の分割者の所有地のみを通行することができる。この場合においては、償金を支払うことを要しない。
② 前項の規定は、土地の所有者がその土地の一部を譲り渡した場合について準用する。
他人の土地を通る権利を、囲繞地通行権(いにょうちつうこうけん)というのですが、これを規定したのが、民法210条です。
ケース②のように、袋地を囲んでいる土地を「囲繞地」といい、袋地の所有者はA・Bの土地(囲繞地)を通る権利があります。
車も私道や隣地を通行する権利はあるの?
車の通行までは民法は保障していないという事になっています。
ですが、隣地や私道の所有者と交渉し、同意を得られれば可能です。
また、同意が得られた際には、通行地役権の設定登記をしておくといいでしょう。
そうすれば、仮に隣地や私道の所有者が他人に土地を売ったりして所有者が変わっても、車の通行の権利を主張できます。
通行料は支払うことになるの?
通行料に関しては、少しややこしい面があります。
それぞれのケースで説明します。
私道が建築基準法上の道路(2項道路)とされている場合
私道によっては、建築基準法第42条第2項で「建築基準法上の道路」とされている場合があります。
この場合、私道の所有者は、私道を道路として他人に提供する義務があり、他人が通行することを禁止できません。
ただし、だからと言って、他人が通行する権利を主張できるわけではありません。
そのため、仮に私道所有者が「通るな」という立て看板を置いて妨害しても、通行人の権利を侵害したことにはならないのです。
通行人としては、なんとかしたいと思うでしょうが、裁判所に訴えることもできません。
解決策の一つとしては、市区町村に相談して、私道所有者を指導してもらうことです。
なお、妨害されたことに腹を立て、勝手に立て看板などの妨害物をどかしてしまうと、逆に私道の所有者から所有権侵害として訴えられてしまいます。
また、自動車、バイク、自転車の場合には話が変わります。
私道の所有者は、徒歩以外の自動車等での通行までを、他人に提供する義務を負っていません。
このように、2項道路の通行に関してはややこしくなっています。
何も言われなければそのまま通行料を支払うことなく通行していても問題はありませんが、トラブルになった際には、通行料の支払いをして通行権を取得した方がいいでしょう。
通行権があれば、妨害された場合には権利を侵害されたと主張できます。
妨害をやめさせることや損害賠償を請求することも可能です。
なお、通行料を支払うなりして通行権を取得する際には、自動車やバイク、自転車での通行も含むようにしておきましょう。
単なる私道の場合には通行料は必要?
何も言われない場合には無料で通行していればいいでしょう。
しかし、歩いて通行する場合でも、通行料を請求された場合には支払いすることになります。
例えば、私道の所有者が私道に対する税金や管理費を負担している場合です。
それらの費用の負担は、原則として、所有者または私道を利用している方が負担することになっています。
そのため、所有者は無償で提供する義務はありません。
車やバイクで通行する場合も同様です。
袋地で他人の土地を通らないといけない場合の通行料
袋地の所有者には、民法210条で「隣地通行権」が認められていることは説明しました。
しかし、通行する権利はあっても、全てのケースで無償ではありません。
基本的には、通行の権利はあっても、通行料を支払う義務があります。
例外として、無償で利用できる場合もあります。
それが第213条です。
① 分割によって公道に通じない土地が生じたときは、その土地の所有者は、公道に至るため、他の分割者の所有地のみを通行することができる。この場合においては、償金を支払うことを要しない。
② 前項の規定は、土地の所有者がその土地の一部を譲り渡した場合について準用する。
わかりやすく言うと、
「公道に面していた土地を分割したり、一部譲渡したことで袋地ができた場合」には、袋地の人は通行料を支払うことなく通行できます。
ただし、通行できるのは残余地のみです。
わかりづらいの図で説明します。
青い部分は公道だとします。
Eが袋地となります。
Eの袋地はもともとは左隣のDと一つの土地で、分割してできた袋地だとします。
この場合、Eの所有者は残余地であるDの土地の通行権が認められ、通行料を払う必要はありません。
しかし、E以外のBやF、Hの土地を通行する権利はありませんので、通行するためには承諾や通行料を払うことになります。
通行料の金額については、その土地周辺の賃貸借の賃料などを参考にして話し合いで決めるのが一般的です。
話し合いでは金額に折り合いがつかない場合には、裁判所で決めることになります。
また、分割や一部譲渡で袋地になったかどうか不明の場合には、土地の登記簿謄本で取得すれば確認できます。
詳しくは、専門家にご相談ください。
なお、残余地を無償で通行できるのは、歩いてだけです。
車やバイクで通る場合には、無償ではありません。
残余地の所有者次第となります。
民法で通行できると認められているのに妨害される場合の対処について〜妨害排除の仮処分申立て
民法で通行が認められているにもかかわらず、妨害してくる場合ですが、権利を侵害されている事になります。
まずは、妨害してくる方に対して、民法で保障されている権利の行使である事を丁寧に説明してみましょう。
話し合いをしてもなお妨害行為が続くようでしたら、法的に解決するしかありません。
そこで、裁判所に妨害排除の仮処分申立てをしましょう。
これは、裁判所が妨害行為をする人に対して、通行を妨害しないように命令するものです。
また、妨害行為の一種として、通行させないように壁や塀、物を設置している相手に対しては、それらを撤去する仮処分を出してもらいましょう。
命令が出ても相手が撤去しない時には、執行官が強制的に撤去する事も可能となります。
妨害のされ方、通路の形状や所有形態によっては通行料が発生したり通行できない場合もありますので、一度専門家に相談してみてください。
参考ページ:地域の相談窓口