相続で親に借金があることが発覚【相続放棄】親の残した借金をどうなるの?借金がある場合の相続と相続放棄 | ウルトラ弁護士ガイド
この記事を読むのに必要な時間は約 2 分です。
親に借金があったなんて・・・
親が亡くなるまで親の財産や経済状況を知らなかった!という人は多くいます。
- 家賃の未払いに市県民税や税金の未払い。
- 仕事関係での負債。
- 消費者金融からの借り入れ。
ほとんどの人は親の借金なんて相続したくないと思うはずです。
ただ、借金だけじゃなく「プラス」となる預貯金といった財産もあったらどうでしょう。
相続放棄をしたほうが良いのかどうか・・・
悩みますね。
ただ、相続放棄するとなれば期間も決まっています。
期間内に判断しなくてはいけないのです。
ここでは、借金がある場合の相続や相続放棄について紹介していきます。
目次
相続には「単純承認」「限定承認」「相続放棄」と3つの選択がある
相続と聞くと、多くの方は親が残した財産を受け取るものだと思っているようですが、それは違います。
また、相続財産には、家や預貯金などのプラスとなるものだけが対象になると思っている方もいますが、それも違います。
借金(負債)があれば、それも相続財産に含まれるのです。
だからこそ、簡単に相続するかどうかを考えてはいけませんし、相続には、「単純承認」「限定承認」「相続放棄」という3つの選択肢があります。
まずは、それぞれどういうことなのかを確認していきましょう。
単純承認とは?亡くなった親が残した財産の全てを無条件で引き継ぐ方法
単純承認と聞くと難しく聞こえますが、単に親が残した全ての財産を引き継ぐ方法です。
プラスもマイナスも無条件に引き継ぐことになりますので、借金があれば相続人が返済することになります。
特に何かの手続きをすることはありません。
相続人同士で遺産分割して、財産を分けたり、借金があれば返済した場合に単純承認したと判断されます。
また、亡くなったことを知ってから3ヶ月を超えると、何もしなくても単純承認したと判断されます。
限定承認とは?すぐに判断ができない時に使える方法
預貯金や持ち家もあるけど借金もそれなりにある…
このような場合、財産を引き継ぐかどうかの判断はすぐにできないと思います。
プラスとなる財産がどれだけあるのか、マイナスとなる財産がどれだけあるのかを調査してから決めたいですよね。
そんな時に使えるのが限定承認です。
メリットとしては、プラス財産を超えるマイナス財産については引き継がなくていい、という点です。
例えば、
限定承認手続きをしていれば、プラス財産3000万円を超えてしまう1,000万円については引き継がなくていいのです。
単純承認であれば、4000万円のマイナス財産をそのまま引き継がなくてはいけないため、限定承認した方がメリットあるように思えますね。
ただ、デメリット面も多くあります。
亡くなってから3ヶ月以内に手続きをしなくてはならないのですが、相続人全員の協力が必要なのです。
1人でも反対する人がいたらできません。
また、手続きをすれば終わりではなく、その後にも清算手続きや確定申告など、とても面倒で手間がかかります。
そのため、実際にはあまり使われていない手続きとなっているのです・・・
代わりに使われているのが、相続放棄の期限を延長する方法です。
延長される期間は個々の事情にもよりますが、財産調査に時間がかかる場合や相続人と連絡が取れない場合には1年以上延長してもらえることもあります。
そこまで特別な事情がない場合には、1ヶ月から3ヶ月程度となっています。
なお、延長の手続きは、相続人ひとりひとりが行わなければいけません。
兄が手続きしたからといって、弟の期間も延長されるわけではないので気をつけましょう。
相続放棄とは?明らかに預貯金などのプラス財産より借金が多い場合に使える方法
そんな時には相続放棄です。
放棄の手続きさえすれば、親の借金を払う必要がありません。
手続きができる期間は親(被相続人)が亡くなった日から3ヶ月以内です。
そんな短い期間では財産調査ができない、疎遠の相続人に連絡が取れないなどの事情がある場合は期間の延長の手続きをしてください。
ただ、実際には判断が難しくて期間内に手続きすることができない、ということの方が多いです。
例えば、持ち家があるけど借金もある、というケース。
借金の方が多くても、どうしても自宅を引き継ぎたい、という方もいるでしょう。
どうしても引き継ぎたいものがある場合には、相続放棄せずに引き継ぐのも1つです。
相続放棄した方が良いケースをいくつか紹介するので、参考にしてみてください。
借金もあるけど生命保険金もある場合
例えば、預金500万円、生命保険金3000万円、借入金が4000万円の場合。
単純承認をすると、△500万円となり返済しなくてはいけません。
一方、相続放棄をした場合。
預金500万円と借入金4000万円はなくなります。
ですが、生命保険金3000万円は受け取ることができるのです。
生命保険は受取人の固有の財産になるからです。
結果、3000万円のプラスになります。
亡くなった親が保証人(連帯保証人)になっている場合は注意
亡くなった親自身に借金がなくても、親が知人の保証人(連帯保証人)になっているケースでは注意が必要です。
保証債務も相続財産に入るため、相続人は放棄しない限り引き継ぐことになります。
借金を背負っている知人本人がしっかりと返済してくれればいいですが、返済できなくなったら保証債務を引き継いだ相続人が返済することになってしまいます。
このように、相続するかどうかは慎重に判断しなくてはいけません。
預貯金などのプラスの財産がどれだけあって、借金などのマイナス財産がどれだけあるのか。
親の財産状況をよく知ってからどのような相続をするかを考えてください。
相続放棄の手続きをしたい!何をどうしたらいいの?
相続放棄の手続きは家庭裁判所で行います。
費用も8000円と郵便切手代とそれほどかかりません。
必要な書類は、相続放棄の申述書というのがあるので、必要事項を記載します。
また、申立てる人の戸籍謄本と被相続人(亡くなった方)の住民票除票又は戸籍附票を用意することになります。
それらを裁判所に提出すれば、3〜4日程度で「相続放棄申述受理通知書」というのが裁判所から郵送されてきて終了です。
とても簡単でシンプルな手続きなので、個人でも問題なくできます。
相続放棄は相続人みんなで! 1人だけがすればいいわけではない
遺産相続の対象となる人は、配偶者、子ども・孫、亡くなった人の両親・亡くなった人の祖父母、兄弟と、範囲が決まっています。
そして、順位も以下のように決まっています。
第一順位 | 亡くなった人の子ども |
---|---|
第二順位 | 亡くなった人の両親 |
第三順位 | 亡くなった人の兄弟 |
第四順位はありません。
なお、配偶者に順位はなく、必ず相続人になります。
これをおさえたうえで相続放棄をするとなった場合!
第三順位までの相続人全員が放棄の手続きをしなくてはいけません。
例えば、亡くなった方に多額の借金があった場合なら。
相続人の誰か1人でも手続きをしなかった場合、その相続人一人一人が借金を背負うことになってしまうからです。
葬式費用を出すために相続財産を使ってしまった場合でも相続放棄はできるの?
基本的には、亡くなった方の財産を使用してしまうと、単純承認したことになり、相続放棄ができなくなってしまいます。
このことから、葬式費用を亡くなった親の財産から支払ってしまった場合には相続放棄ができないのか?という不安もあるでしょう。
葬式費用程度であれば、亡くなった方の財産から支払っても問題ないとされています(平成14年大阪高裁判決)。
しかし、一般常識的に考えて、普通よりも豪華なお葬式の場合は放棄が認められなくなることもあるので気をつけてください。
また、葬式費用の範囲についてもおさえておきましょう。
お葬式では、香典返しもすることになりますが、香典返しのための費用は葬式費用には含まれません。
なお、香典は相続財産には含まれません。
参列者から遺族への贈与というかたちで扱われますので、遺族が使用することができます。
ただ、金額が常識を超えるような金額の場合には贈与税を支払うことになる可能性もあるので気をつけましょう。
また、仏壇やお墓などの購入もすることになりますが、これらも含まれませんし、初七日や法事の費用も葬式費用には入りません。
実際には個々のケースでも変わってきますが、あれもこれも大丈夫だとろうと財産から使用するのはやめておきましょう。
一度相続を放棄してしまったら別の身内が亡くなった時には相続人になれないの?
父親が亡くなった際に相続放棄をした場合、母親が亡くなった際に相続人にはなれないの?というお話です。
父親が亡くなった際、子供達だけが放棄した場合を例に説明します。
子供達だけが放棄して母親は放棄せず父親の財産を引き継いだ場合ですが、母親は父親の一切の権利義務を引き継ぎます。
その後に母親が亡くなった場合ですが、母親の財産(父親から引き継いだ財産も含む)についての相続が開始されます。
この際、すでに父親の財産はすべて母親のものとなっています。
よって、過去に父親の財産の相続放棄をしたからといって、母親の財産(父親の財産を含む)の相続ができないわけではありません。
父親の財産は誰も引き継いでないことになるので何もありません。
母親が亡くなった際、母親に財産があればそれを相続するかどうかの問題になります。
よって、相続することもできますし、相続放棄することもできます。