【相続と住宅ローン問題】住宅ローンの返済中に親が亡くなってしまった!相続するかどうかの判断と対処方法 | ウルトラ弁護士ガイド

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親が亡くなった直後というのは、悲しみも忘れるくらいバタバタとせわしくなります。

そして葬儀も終わり、やっと少し落ち着いて財産の整理や片付けをしている時です。

母親から

  • 「この家、まだローンが残っているの・・・」
  • 「亡くなった父あてに住宅ローンの督促状が届いた!」

という感じで住宅ローンの存在を知ることになる例があります。

突然のことですから、驚き不安にもなるでしょう。

「このローンは一体どうなるの?」

「誰かが支払う事になるのか?」

安心してください。

きちんと対処すれば親が残したローンで苦労することはありません。

「親が住宅ローン返済途中で亡くなった場合」について、どうすれば良いかについて説明します。

やるべきことを順にしましたので、参考にしてください。

目次

ローンの契約内容と生命保険の加入を確認しよう

住宅ローンの契約をするときというのは、「団信保険」という生命保険に加入するかどうかが求められるのが通常です。

この団信保険への加入が貸し出しの条件になっている金融機関がほとんどです。

まずは住宅ローンの契約書を探して、この保険に加入しているかを確認してみてください。

契約書が見当たらなければ、ローンを組んでいる銀行等に連絡して聞いてみましょう。

大事

団信保険に入っていたかどうかはとても重要です!

この保険は、契約者が支払いすることができなくなった時に役立つものになります。

契約者が死亡や高度障害になってしまった場合、残っている住宅ローンがあれば、「保険会社が契約者の代わりにですべて払ってくれる」というサービスなんです。

つまり、保険に加入していれば、ローンが残っていたとしても残された遺族が払うことなくローンという借金を消すことができるのです。

親がローンを残したままであろうと、何も気にすることはありません。

ローン契約をしている銀行に連絡をして、手続きをしてもらいましょう。

団信保険に加入していない場合〜現金、預貯金、その他の財産と負債をすべて出してみよう

実際に、親の財産のすべてを把握している子供というのはほとんどいません。

ローンを返済できる預貯金があるのかどうかは重要です。

無ければ、相続放棄も検討しなくてはいけないからです。

例えば、借金ばかりしかない親もいます。

亡くなられた今、既に相続は開始されています。

何もしないで3カ月が経過すれば、自動的に「単純承認」されたとして、相続は終わってしまいます。

相続人となる子供たち(母親)は、その借金を返さないといけなくなってしまいます。

住宅ローンも同じです。

相続の手続きでは、「相続放棄」という手続きがあります。

これは全ての財産を放棄するという手続きとなりますので、借金や住宅ローンなどの負債を全てなくす事ができます。

ただし、マイナスの財産だけでなく、預貯金等のプラスの財産も放棄することになります。

また、住宅ローンが残っているケースで相続放棄をすれば、家も放棄することになります。

その点には注意が必要です。

亡くなった親に預貯金等がなく、家を残したい場合には、相続する方(子供ら)が支払わなければいけません。

住宅ローンをどうするか、相続人でよく話し合う必要があります。

結果、住宅ローンを払えず、家を放棄すると決断した場合には、相続放棄の手続きをするといいでしょう。

その際には、期限があることに注意してください。

相続放棄ができるのは、親が亡くなったと知った時から、3カ月以内です。

ですから、葬儀が終わった後には、親のすべての財産を洗いざらい出してみてください。

早い段階で、相続放棄をする必要があるのかどうかを決めなくてはいけません。

親の財産の全てを把握する〜財産となる項目とは?

相続放棄するかどうかを判断するためには、住宅ローンや預貯金以外にも、すべての財産をだしてきちんと把握する必要があります。

相続は相続税の問題もありますし、相続人同士の遺産分割の問題もあるからです。

後から申告漏とかで、延滞税や加算税等の追徴課税の問題がでてくることだってあります。

bunnpai1それに、相続人となる人が母親・弟・妹などと複数いる場合には、財産を正確に出して相続をしておかないと争いの原因になることもあるんです。

葬儀が終わって一安心、やっと落ち着ける頃に大変だとは思いますが、「すべての財産を把握すること」は重要です。

そこで、財産について説明します。

財産と聞くと、現金や預貯金、家や土地を思い浮かべるかと思います。

もちろん、それも財産ですが、他にも色々とあります。

住宅ローンや借金という負債も財産になるのでしっかり確認をしましょう。

一般的な例として、以下に項目を紹介しておきます。

プラスとなる項目例

  • 現金
  • 預貯金
  • 定期預金
  • 株式
  • 土地や家などの不動産
  • 自動車などの動産
  • 有価証券
  • 生命保険
  • 損害保険
  • 高級腕時計・高級アクセサリー・骨董品など

負債となる項目例

  • 住宅ローン(銀行へ残債の確認)
  • 借金(カードローン、消費者金融等)
  • 友人・知人からの借金

財産が分からない場合の見つけ方

親が金庫等を持っていて、大切な書類や通帳などをそこに保管していればいいのですが、何がどこにあるのか分からない場合もありますね。

探しても見つからない場合、何を手掛かりにして財産を把握したらいいのか?困ってしまうこともあるでしょう。

そこで、親の財産の見つけ方を紹介していきます。

財産の調査方法 ①預金通帳が見つからない場合

とにかくまずは通帳を見つけ、預金先を知りたいところです。

預金先が分かれば、出入金明細を出してもらえます。

その明細に、定期預金の利子や配当金、保険会社からの入金があれば手がかりとなりますよね。

ですが、通帳がどうしても見当たらない場合には、キャッシュカードを探してみてください。

もちろん、出金明細でもいいですよ。

それでも預金先や取引のある金融機関が分からないとなると、親から聞いたことのある金融機関に必要な書類をもって、口座の有無を確認してみましょう。

この状況の場合、銀行には親がなくなったことがばれてしまうので、相続が終わるまではお金を引き出すことができなくなります。

また、クレジットカードを利用していた場合には、その利用明細から引き落とし口座が分かることもあります。

預貯金先等の金融機関(支店)がわかったら、「残高証明書」を発行してもらってくださいね。

財産の調査方法 ②どんな保険に加入しているか分からない場合

保険証券があればすぐに分かりますね。

証券が見つからない場合は、保険料の支払い領収書や生命保険料控除証明書、保険内容確認の通知やパンフレットなどを探してみましょう。

車を持っていた場合には、車検証と一緒に車に保管してある場合もありますよ。

確定申告していた場合なら、生命保険料控除欄から確認することもできるでしょう。

財産の調査方法 ③株・有価証券があるのかどうか不明な場合

株式や債券などの証券証書を探してみましょう。

見つかったら、取引のある会社に連絡して、「評価証明書」というのを発行してもらってくださいね。

証券が見つからない場合ですが、生命保険と同様に関連する書類や預金口座への配当金や出金から見つけられることもあります。

また、株などで収入があれば、確定申告をしていることでしょう。

確定申告からも調査できますね。

財産の調査方法 ④不動産の価格をしる方法

家の場所は分かるはずなので、法務局に行き「登記簿謄本」をとりましょう。

評価額については、土地は路線価という国税庁の出している土地の値段によって決まるのが通常です。

路線価がないところもありますが、そこに関しては固定資産税に何倍かをかけて計算されます。

建物については、固定資産税が評価額となるので、市役所に行けば分かります。

財産の調査方法 ⑤借金があるのかどうかを調べる方法

keiyakusyoinnkann借金があるかどうかを調べるのが一番難しいかと思います。

知られたくない気持ちから、隠されていることがあるからです。

亡くなられた方が大切なものを保管している場所があれば手がかりになるのですが、それ以外だとキャッシュカードや利用明細などがないか探してみましょう。

また、カードローンの利用や借り入れ等をしていた様子があるようでしたら、「個人情報信用機関」に情報開示を求めてみてください。

借り入れなどの情報が管理されているところなので、何かわかるかもしれませんね。

主な財差の調べ方について説明をしましたが、亡くなられた方が手帳や日記帳、名刺ファイルなどをお持ちの場合、そこから手がかりとなる情報が出てくることもあります。

大変な作業にはなると思いますが、相続するか放棄するかの判断材料になるので、しっかり探してくださいね。

住宅ローンが残っている場合にやること〜アンダーローンかオーバーローンかを確認しよう

iwtodeta財産をすべて把握できたら、次にやることは不動産の売却価格を知ることです。

なぜ売却価格をここで出さなくてはいけないかというと、以下のどちらの状態になるかを知るためです。


①残債>売却価格ならオーバーローン

②残債<売却価格ならアンダーローン


数か所から査定をだしてもらい、住宅ローンの残りの金額と売る場合の売却価格、どちらが高い金額となるかを確認しましょう。

なお、団信保険に加入していてローンがなくなるのであれば、不動産が財産として残るので多少の負債があってもプラスになると判断できます。

財産すべての把握ができたら!総合的にみて相続財産がプラスとなるかマイナスとなるかを確認しよう

アンダーローンかオーバーローンのどちらの状態になるかがわかったら、相続財産が全体としてプラスになるのか?マイナスになるのか?を確認しましょう。

その際には、以下に当てはめてみてください。
(ローン付き不動産の売却価格見積-残りのローン債務)+(他の財産)

これで相続財産が全体的にどうなるのかの判断ができるはずです。

相続放棄の手続き期間に間に合いそうにない場合、「限定承認」という方法もあります。

限定承認とは、「財産がマイナスだった場合には相続しない」という保険のようなものです!

相続では相続財産が全体的にプラスとなるのか?マイナスとなるのか?の判断が重要です。

しかし、家の売却価格を出したとはいえ、実際に売却してみないことには全体としてプラスになるのかどうかが分からない場合もあります。

例えば、

「ローン付き不動産売却価格見積1900万-残りのローン債務2000万)+(他の財産300万)」

という見積のままでいけば全体的な相続財産はプラス200万と思うことでしょう。

実際に売却してみたら、

「ローン付き不動産売却価格1600万-残りのローン債務2000万)+(他の財産300万)」となった。

実際に売却してみたら、相続財産全体としてはマイナス100万だった。

このようなケースも少なくありません。

実際に売れる金額次第ではマイナスになるのかプラスになるのか微妙な場合には、限定承認をして保険をかけておいたほうがいいのです。

限定承認をしておくと、仮に全体としてプラス(300万)だと思っていたのに、相続後にマイナス(100万)になってしまった場合でも、その差額となるマイナス部分(100万)を返さなくて良いことになるのです。

逆に、結果的に相続財産全体ではマイナスだと思っていたのに、相続後にプラスとなった場合には、その差額分のプラス部分を相続財産として受け取ることができます。

限定承認の手続きは、相続開始から3カ月以内にしなくてはいけない手続きで、相続人となる人が全員で手続きしないといけません。

ただし、限定承認は民法上のことだけではなく税法上も関係してきます。

専門家に相談して依頼した方がいいと思います。

限定承認の弁護士費用の相場は、資産価値の10%(最低30万円)となっています。

この費用もふまえたうえで判断してください。

参考ページ:相続で問題がおきた場合のポイント〜弁護士の無料相談を利用して解決する!

総合的に財産がプラスになる場合〜住宅ローンの返済について考える

相続財産が、全体としてはプラスになっている場合、住宅ローンの返済について考えなくてはいけません。

家を残すとなれば、誰かが残りのローンを返済していかなくてはいけないからです。

相続人が複数いれば、それぞれの事情によって、「そのまま残したい」、「残さないで売却したい」などと意見はわかれるでしょう。

難しい判断になるかと思いますが、よく考えて判断しなくてはいけません。

売却するかしないかによって、その後の解決策が変わりますので、ケースごとに説明していきます。

実家を残したい場合〜ローンを支払う余裕があるかどうかを考える

seikatuローンの途中ですから、月々のローンを支払わなくてはいけません。

ローンを支払う余裕のある状況でしたら、そのまま相続してローンを支払い完済へと進めていけばいいでしょう。

一方、住宅ローンを払えない場合。

支払いができない状態が続いてローンを滞納すると、借入先から一括返済を迫られることになります。

他の財産を早く現金化して支払いを急ぐしかありません。

それができないなら、売る判断をした方がいいでしょう。

実家を売りたい方〜借入先が競売する前に行動する

実家を売ると判断した場合には、不動産業者に査定を依頼して、早期に売却を進めていきましょう。

なお、売るからと言ってローンの返済をいつまでも止めてしまうと、借入先の銀行が競売へと進めてしまうこともあります。

競売へと進まないように、早めに行動するようにしてください。

参考ページ:住宅ローンを滞納しそうな場合・滞納している場合の対処方法

親の財産が総合的に財産がマイナスになる場合〜ケースごとの対処法

全体的にマイナスとなる場合には、まずは実家を残したいかどうかを考えましょう。

残すかどうかの判断は、相続人にローンを支払う余裕があるのかどうかがポイントです。
支払う余裕がある場合なら、そのまま相続して支払いを続けて完済すればいいですね。

逆に、支払いができない場合には、家は諦めて相続放棄をしたほうがいいでしょう。

相続放棄の手続きさえすれば、ローンの返済についてもう心配する必要は無くなります。

支払える余裕もないのに残そうとすれば、後々苦労することになります。

それはやめておくべきです。

相続財産が全体的にマイナスで母親が連帯保証人となってしまっている場合〜ケースごとの対処法

住宅ローンの連帯保証人に母親(亡くなった方の妻)がなっている場合もあります。

母親は、相続人でもあり、連帯保証人でもあるという場合です。

この場合、「相続人として心配事がなくなれば安心」ということではありません。

連帯保証人となっている場合には、気をつけないといけないケースがありますのでいくつか例をあげて説明します。

参考ページ:連帯保証人、連帯債務についてこちらに詳しく説明しています。

連帯保証人がいる場合でオーバーローンで任意売却する場合

オーバーローンですから、任意売却後にも債務が残る状況となります。

任意売却後に残る残債を払えるかどうかがポイントになります。

参考ページ:任意売却とは住宅ローンを払えない場合の解決方法

任意売却後の残債を払える状況の場合

残ったローン債務を清算すれば、すべて解決です。

また、誰かが保証人になっていた場合には、保証債務も無くなります。

売却後の残債を払えない状況の場合

連帯保証債務は残ってしまい、支払いの義務があります。

解決方法は、

①自己破産をして支払いの義務をなくすか

②他の相続人の協力を得て残ってしまったローン債務を少しずつ支払っていくしかありません。

相続人がローンを引き継ぎ家を残す場合

家を連帯保証人である母親、または相続人となる子供が相続をするケースです。

これまで通り、残りのローンを返済するということになるため、母親の連帯保証債務はなくなりません。

母親自身または他の相続人(子供)と一緒になど、とにかく完済すれば保証債務は無くなります。

(完済するまでは保証債務は無くなりません)

相続人全員が相続を放棄した場合

他の相続人と一緒に母親自身も相続放棄をするケースです。

相続放棄をしても連帯保証人としての保証債務は消えません。

この場合、どうしても保証債務を無くしたいのであれば、自己破産をするしか保証債務を消すことはできません。

参考ページ:ローンや借金の返済が厳しい方!自己破産をした方が良いケースもあります

まとめ

住宅ローンの返済中に親が亡くなった場合

まずは団信保険の確認です。

加入していない場合には、全ての財産の把握をしましょう。

そのうえで、どうするかをよく考えて判断するべきです。

中には、相続放棄や売却することを検討しなくてはいけない方もいるでしょう。

売却するとなるとある程度の時間はかかりますし、相続放棄するとなれば手続きの期間に制限があります。

放棄ができる3カ月というのはあっという間です。

既に問題に直面してしまって時間がない、どうしたらいいのか悩んでいる人は、すぐに専門家に相談にいくべきです。

関連ページ:相続問題を得意とする弁護士事務所の一覧

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