【寄与分】介護や家業を頑張った相続人は法定相続分よりも受け取れる遺産が増える!寄与分を受けるための条件 | ウルトラ弁護士ガイド
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父親も高齢になり、体調が悪くなったのが今から12年くらい前のことです。
我が家は代々伝わる醤油屋で、父は祖父から後を継ぎました。
私には長男がいますが、長男は後を継がず全く別の仕事をすることを選択。
いずれは次男である自分が家業を手伝い、後を継ぐことは覚悟していました。
それが12年前のことです。
当時の職場を辞め、家業を継ぐことを決意し、家族にも理解してもらって両親と同居をすることになりました。
しかし、父は持病を抱えており、歳をとるたびに体調は悪くなる一方。
父の透析生活が始まり、母も高齢のため、妻にも協力してもらい、家族で家業を支えてきました。
私たち夫婦は両親を支えながら、どうにか家業が傾かないように頑張ってきたのです。
しかし、先日、父親が亡くなりました。
透析もしていたため、長くは生きられないことは覚悟していました。
残された私としては、父が人生をかけて守ってきた家業を守っていかなくてはいけません。
そんな思いを抱えながら葬儀もひと段落した時です。
兄から家や土地の相続について話がありました。
家業や父の介護には全く関与してこなかった兄ですが、長男だから家や土地をもらう権利があると、わけのわからない主張をしてきたのです。
法律的には兄にも相続の権利はあるのはわかっています。
ですが、兄と私で同じというのは納得がいきません。
家業のこともあり、公平に分けるとなれば経営にも影響してきます。
このように、相続人のうちの一部の者だけが、介護をおこなったり、家業に従事するケースはよくあることです。
民法では、亡くなった方を支えた、サポートしたなど、民法で満たす条件に含まれるような貢献を相続人がした場合、寄与分という制度を受けることができます。
一定の条件を満たして寄与分が認められれば、通常受け取ることができる相続分以上の財産を受け取ることができるのです。
ここでは、寄与分を受けるための条件などについて、詳しく紹介していきます。
目次
相続の不公平を解消するのが寄与分という仕組み
寄与分というのは、亡くなった方の財産維持や必要以上の貢献をした人にむくいるための制度です。
同じ相続人であっても、たくさんサポートした相続人には、特別に財産を多くもらえるようにしよう、という仕組みです。
では、どのような協力やサポートをした相続人に認められる制度なのか?
寄与分が認められるための条件を紹介します。
寄与分が認められる特別な貢献とは?具体的にはどんなこと?
寄与分が認められるには、「特別な貢献」が必要となります。
具体的には以下のとおりです。
- 被相続人の事業に関する労務提供
- 長年にわたり、給料という給料をもらわず家業を手伝った場合
- 金銭出資等の財産上の給付
- 親の会社が経営困難に陥った際に資金援助をした場合
- 被相続人の療養看護
- 病気の親と同居して看護に徹した場合
なお、上記に該当するからといって寄与分が認められるとは限りません。
家族には互いに助け合うという扶養義務がありますので、助け合う義務を超えるような負担があったことが必要です。
家業を手伝うにしても、精神的な援助や協力では認められず、資産が増加した、減ることを阻止したなどが必要になります。
寄与分が認められるための条件とは?
寄与分が認められるのは法定相続人だけです。
もっと言えば、遺産分割協議に参加する相続人だけとなり、以下のような方には認められません。
- 相続放棄した相続人
- 廃除された相続人
- 相続欠格事由に該当した相続人
- 包括受遺者
なお、相続人ではない内縁の妻などには認められません。
証拠がないと寄与分は認められない!
他の相続人にも寄与分があったと認められることが必要です。
そのためにも、「特別な貢献があった」とわかる証拠を用意しなくてはいけません。
具体的な証拠とは?関係する書類は全て取っておく!
証拠はケースによって異なります。
例えば、家業を手伝っていた場合なら、本当に働いていたかどうかを示さなくてはいけません。
勤務表やタイムカードはもちろんですが、経営に影響を及ぼしたと言える証拠も必要です。
帳簿や決算書など、会社資金の維持や増加を示すような書類が必要になります。
他にも、通帳の写しや資金援助した場合にはATMの取引明細書、カードの使用履歴なども証拠になります。
看護をしていたケースであれば、看護日記や診断書、介護認定書類などを準備してください。
証拠はあればあるだけ用意して、特別の寄与があったことを明確に示せることが認定のポイントになります。
他の相続人に主張しなくてはいけない!寄与分の請求方法
特別な貢献をした相続人は、他の相続人に主張しないと寄与分は認められません。
まずは、相続人同士の話し合い(遺産分割協議)で主張しましょう。
話し合いでは認めてもらえない場合には、家庭裁判所での調停・審判の手続きを利用していくことになりますが、寄与分が認められるかどうかの判断は素人では難しいです。
弁護士に相談し、自分の行動や行為が特別な貢献となるのかどうのアドバイスをもらっておくといいでしょう。
ただ、それぞれケースが異なるため、実際に認められるかどうかは裁判所の判断になります。
これまでの判例を紹介しますので、参考にしてみてください。
寄与分が認められた事例〜判例からチェックする
認められた代表的な判例をいくつか紹介します。
①労務提供のケース〜1977年福岡高裁-引用
家業である農業に46年間も従事し、そのうちの27年間は給料をもらうことなく働いた。
相続人の長男と配偶者に対して、長男10%、配偶者に30%の寄与分が認められました。
②療養介護・扶養ケース〜1986年盛岡家裁-引用
重い痴呆症だった親を10年に渡って介護してきた相続人に対して1213万円の寄与分が認められました。
③財産管理・出資ケース〜昭和59年和歌山家庭裁判所-引用
亡き夫が不動産購入する際、妻(相続人)の収入も含めて購入したため、妻に82.3%の寄与分が認められました。
④財産管理・出資ケース〜平成8年高松家庭裁判所-引用
亡き親が創業した会社が経営困難になった際、相続人の1人が資金を援助した。
この相続人については、遺産の20%が寄与分として認められました。
寄与分が認められなかった事例〜判例からチェックする
認められなかった主な判例をいくつか紹介します。
①労務提供のケース〜1974年仙台家裁-引用
訴えを起こした相続人は7年ほど家業の農業に従事してきましたが、被相続人が生きている時に生前贈与を受けていた。
また、相続人が従事した7年間で相続財産に変化はなく、増加することもなかったため寄与分は認められませんでした。
②財産管理のケース〜平成19年大阪家庭裁判所-引用
被相続人が生きている時に、相続人はその資産を株式や投資信託によって運用し増加させた。
しかし、資産運用は損失のリスクもあることなどから、「特別の寄与」とは認められませんでした。
③労務提供のケース〜昭和48年高松高裁-引用
亡くなった夫の事業を発展させて事業の成功に貢献した配偶者でしたが、夫婦間の協力義務の範囲を超えるような貢献があったとは言えないとして、寄与分が認められませんでした。
④平成18年大阪家庭裁判所堺支部-引用
被相続人と長年同居してきた相続人が、約2年間の間被相続人の入院時の世話や通院付添などをしていた事案において、「同居親族の通常の相互扶助の範囲を超えるものではない」として、寄与分が認められませんでした。(療養介護型)