【遺留分】想定外の遺言書に納得できない!相続人なのに財産を受け取れないの?遺留分を主張して請求しよう| ウルトラ弁護士ガイド

この記事を読むのに必要な時間は約 2 分です。

先日、夫が亡くなりました。

家を整理していると、公正証書遺言を発見したのです。

しかし、思いもよらない内容でした。

遺言書には、妻である私の名前がなかったのです。

私は後妻として,亡くなった先妻が残した長男と長女を幼い頃から育ててきました。

私と夫との間に子供はいません。

そのため、自分が産んだ子のように可愛がり、愛情を注ぎ込みました。

子どもたちは立派に育ち、既に独立し、新たな家庭を築いています。

ただ、子供達の胸の中にはいつも亡くなった先妻がいたのです。

実の母への思いは強く、仕方ないとは思いつつも、私の中でもどこか寂しさがありました。

思春期にもなると、互いの気持ちはすれ違い、私との関係もギクシャクするように。

それでもどうにか親子関係を築き、巣立っていったのですが、独立した後は連絡を取ることも少なくなり、良好とは言えない状況でした。

私としては、子供達が元気でいてくれさえ良いと思っていたので、それでも良いと思っていたのです。

それに、子供のことを抜きにすれば、夫婦関係は円満でした。

長年夫を支え、子供達が独立した後も2人仲良くやっていました。

このような状況で夫に先立たれ、悲しみに暮れていたわけですが、遺言書の内容を見て驚愕したのです。

遺言書には私の名前はなく、財産は長男と長女に相続させるという内容でした。

後妻ではあるものの、夫の妻として長年尽くしてきたのに・・・

遺言書にあるとおりにしなくてはいけないのでしょうか。

私には何も相続することができないのでしょうか。

ここでは、相続人なのに遺言書に名前がない場合、遺言書に記載されている相続分に納得できない場合について紹介します。

遺言書に書かれていることは絶対なの?相続財産を受ける権利について

H2のタイトル

相続人なのに、「遺言書に自分の名前が無い」という状況になれば、誰もが深く傷つき、怒りさえおぼえるでしょう。

財産目当てではないにしても、名前がなければ財産を受け取ることができないのでしょうか。

まずは、相続財産をもらえる権利があるのはだれか?について知っていきましょう。

今すぐ相続問題に強い専門家に相談するならこちら

相続財産を受けとれる権利がある人とは?法定相続人について

遺言に名前がなくても相続できないわけではありません。

相続人であれば、民法上の権利を主張することができるのです。

遺産を誰がどのくらい相続できるかについては、民法で定められています。

民法では、相続を受ける権利がある人を法定相続人と言います。

民法で定められた法定相続人以外の人は、遺言書で指定されない限り、財産を受けとる権利がないのです。

では、
法定相続人になれるのは?

亡くなった方の配偶者と血縁(親や子)、兄弟姉妹に限定されています。

また、法定相続人の中にも優先順位があり、順位によって財産を受けとる割合も民法で定められています。

例えば、家族4人(父・母・長男・長女)で父が亡くなった場合なら、法定相続人は配偶者(母)と子供2人(長男と長女)です。

亡くなった方の親や兄弟姉妹は法定相続人にはなれません。

親が相続人になれるのは、亡くなった人に子供がいない場合です。

亡くなった方の兄弟姉妹が相続人になれるのは、亡くなった方に子供、親がいない場合です。

法定相続人として受けとれる財産の割合は?

割合については、以下のように民放で定められています。

民法900条
同順位の相続人が数人あるときは,その相続分は,次の各号の定めるところによる.

一  子及び配偶者が相続人であるときは,子の相続分及び配偶者の相続分は,各二分の一とする.

二  配偶者及び直系尊属が相続人であるときは,配偶者の相続分は,三分の二とし,直系尊属の相続分は,三分の一とする.

三  配偶者及び兄弟姉妹が相続人であるときは,配偶者の相続分は,四分の三とし,兄弟姉妹の相続分は,四分の一とする.

四  子,直系尊属又は兄弟姉妹が数人あるときは,各自の相続分は,相等しいものとする.ただし,嫡出でない子の相続分は,嫡出である子の相続分の二分の一とし,父母の一方のみを同じくする兄弟姉妹の相続分は,父母の双方を同じくする兄弟姉妹の相続分の二分の一とする.

分かりやすいように表にしました。

左の部分は法定相続人の組み合わせです。

右側部分がそれぞれの相続分の割合となります。

法定相続人となる人 配偶者 子供 直系尊属 兄弟姉妹
配偶者のみ 100%
配偶者&子供 2分の1 2分の1
子供のみ(配偶者がいない) 100%
配偶者&直系尊属(子供がいない) 3分の2 3分の1
直系尊属のみ(配偶者子供がいない) 100%
配偶者&亡くなった方の兄弟姉妹(子供・直系尊属がいない) 4分の3 4分の1
亡くなった方の兄弟姉妹のみ(配偶者・子供・直系尊属がいない) 100%

・直系尊属とは、亡くなった方の父母や祖父母のことです

遺言書に配偶者の名前がなかった場合はどうなるの?遺留分で権利が保証される!

法定相続人なのに、遺言書に自分の名前がなかったり、ほんのわずかな財産しか受けとれない場合ですが、相続人としての権利が侵害されていることになります。

民法では、法定相続人は、「最低限の相続財産を受けとれることができる」と保証されているのです。

大事

この最低限相続できる権利を「遺留分」といいます。

遺留分について具体的に説明していきます。

遺留分が認められている相続人とは?

遺留分が認められているのは、配偶者、直系卑属(子供や孫)、直系尊属(父母や祖父母)だけです。

これに該当すれば、遺言書に名前がなくても相続を主張できることになります。

なお、亡くなった方の兄弟姉妹には遺留分は認められていません。

遺留分で主張できる財産の割合は?

遺留分として主張できる割合を具体的なケースで紹介します。

①法定相続人が配偶者のみの場合

・配偶者の遺留分=2分の1

財産が2000万円なら1000万円が遺留分となり権利を主張することができます。

②法定相続人が配偶者と子供の場合

・配偶者の遺留分=1/2×1/2=4分の1

・子供の遺留分=1/2×1/2=4分の1

財産が2000万円なら配偶者、子供ともに500万円の遺留分を主張することができます。

なお、子供が2人、3人の場合は以下のとおり。

<子供2人の場合>

・配偶者の遺留分=1/2×1/2=4分の1

・長男の遺留分=1/2×1/2×1/2=8分の1

・次男の遺留分=1/2×1/2×1/2=8分の1

財産が2000万円なら配偶者500万円、子供はそれぞれ250万円の遺留分を主張することができます。

<子供が3人の場合>

・配偶者の遺留分=1/2×1/2=4分の1

・長男、次男、三男の遺留分=1/2×1/2×1/3=12分の1

財産が2000万円なら配偶者500万円、子供はそれぞれ約166万円の遺留分を主張することができます。

③法定相続人が配偶者と亡くなった方の父母の場合

・配偶者の遺留分=1/3

・父・母の遺留分=1/3×1/2×1/2=12分の1

財産が2000万円なら配偶者約666万円、父母はそれぞれ約166万円の遺留分を主張することができます。

なお、父か母、どちらか1人の場合は以下のとおりです。

・配偶者の遺留分=1/3

・父(母)の遺留分=1/3×1/2=6分の1

財産が2000万円なら配偶者約666万円、父(母)は約333万円の遺留分を主張することができます。

遺留分を主張するにはどうしたらいいの?遺留分の減殺請求手続き

法定相続人なのに財産を受けとれない、または遺留分以下の財産しか受けとれない場合には、他の相続人や財産を受けとる者に対して自分の遺留分を請求してください。

これを「遺留分の減殺請求」といいます。

例えば、配偶者がいるのにも関わらず、「子供2人だけに全ての遺産を相続させる」という遺言内容だった場合には、配偶者は子供2人に対して遺留分を主張することになります。

遺留分を主張するための手続きとは?家庭裁判所を利用する

当事者同士の話し合いで解決が可能なこともあります。

ただ、多くの場合は話し合いがうまくいかず、揉めてしまうでしょう。

話し合いでは難しいと感じたら、まずは内容証明郵便で「遺留分減殺請求書」を送付してください。

内容証明を送っても相手方が応じなければ,家庭裁判所で遺留分減殺請求の調停を申し立てましょう。

請求できる期間は、相続の開始(亡くなった日)から10年以内です。

または、相続財産を受けとれない、法定相続人として最低限受けとれる分(遺留分)が受け取れないと知った日から1年以内になります。

この期間内に権利を主張しないと権利自体が消滅して請求できなくなります。

★今すぐ無料で専門家にするならこちら

請求できる期間内に手続きを!遺留分の問題は弁護士を活用する

遺留分について説明してきましたが、法定相続人の誰か1人に全財産を渡すとか、1人だけに渡さない、または赤の他人に全財産を渡すなどの遺言書がある場合に遺留分の問題は起こります。

ここでは、基本的な遺留分の割合を紹介しましたが、実際に請求するとなれば、まずは基礎となる財産を算出しなくてはいけません。

そのためには、

  • 相続開始の時において有した財産
  • 贈与した場合なら贈与した財産
  • 他にも相続人の誰かが勝手に売却した財産や使い込んだ財産

など、あらゆる財産を把握する必要があります。

さらに、どんなものが生前贈与となるのか、すべての贈与が基礎財産に含まれてくるわけではなないため、素人では判断が難しいでしょう。

侵害額を算出するのは、素人には難しいかもしれません。

また、遺留分を主張できる期間が決まっているため、期限内に調査をして算が必要になってきます。

遺留分について知りたい、算出することが困難だと感じたら、早めに手続きに慣れている弁護士などにアドバイスを受けてください。

相続問題を得意とする弁護士事務所の一覧

サブコンテンツ