財産分与では夫の年金や退職金も分配されるの?財産分与の額が知りたい!夫婦の財産の分け方や計算方法 | ウルトラ弁護士ガイド
この記事を読むのに必要な時間は約 2 分です。
離婚の財産分与では、夫の年金や退職金も分配されると聞きました!
夫にそれを伝えたところ。
何で俺の退職金や年金まで渡さなくてはいけないんだ!
俺が20年以上も苦労して働いて貯めたものなのに、それを半分も持って行かれるなんて納得がいかないと。
私はパート勤務でたいした収入もなかったので、夫婦の貯金はそれほどなく、受け取れるお金が多くはありません。
このように、離婚を考えるにあたって「お金」の問題は気になるでしょう。
実際にどのように計算して、いくら手に入るのか知りたい、と思われる方も多いのではないでしょうか。
ここでは、対象となる資産や分配の仕方について紹介します。
財産分与は、それぞれの夫婦や事情によっても異なります。
何も知らないでいると、「貰えるはずのものが貰えなかった!」ということもあります。
「財産分与」で損をしないためにも参考にしてください。
目次
「財産分与」に含まれる資産とは?婚姻前や別居後の資産は対象外
対象となるのは預貯金だけではありません。
次のようなものが対象になります。
- 現金
- 預金
- 車
- 家具
- 不動産(土地・建物)
- 生命保険金
- 有価証券(投資信託)
- 各種会員券
- 退職金
- 年金
- 営業用財産(個人事業主など)
- 借金(ギャンブルや浪費でつくった借金は除く)
など。
結婚して夫婦になってから貯めた貯金や購入した不動産などが対象です。
例えば、独身時代に購入した車や貯めていた貯金などは対象外となります。
別居後に一人で築いた財産も独自のものになり対象外です。
また、婚姻後であっても、相続や贈与で受け取った資産についても共有財産とはなりません。
原則として、夫婦が同居して築いた財産のみが対象となります。
財産分与の基本は2分の1〜収入源が夫だけでも半分もらえる
まだまだ専業主婦やパートの方も多く、夫の収入で生活している家庭が大半です。
また、働いていたとしても、男性よりも生涯獲得資金が少ないのが現状です。
夫婦として貯めた預貯金も夫名義になっていたり、不動産の名義も夫になっているケースも多いと思います。
そのため、離婚の際の財産分与では、夫から妻に渡す、という形が一般的です。
妻にしてみれば、「分けてもらう」と捉えている方が多くいると思います。
どれくらい分けてもらえるのかしら?と不安になりますね。
裁判所の判例では、原則として2分の1ずつとなる例が多くなっています。
妻が専業主婦でまったく収入がなくても半分です。
炊事洗濯と家のことをおこない、夫の仕事を支えたことが夫婦の財産形成に貢献したことになるからです。
財産分与はどのようにするの?財産の分け方
まずは、夫婦の財産がどれだけあるのか全て洗い出してください。
具体的な夫婦の財産が分からなければ、話し合うこともできません。
全ての財産が把握できたら、離婚の際の話し合いでどのように分けるかを決めていくことになります。
もめることなく決めることができれば、夫婦間で協議して決めるのが一番簡単です。
例えば、半分ずつだけでなく7割は妻へ、という分け方でもお互いに納得できれば問題ありません。
夫婦の話し合いですから、自由に定めることができるのです。
分配の仕方も、さまざまな方法が可能です。
- 持ち家や自動車等、夫名義になっている財産を夫が受け取り、それ以外の預貯金等については妻が受け取る
- 持ち家や自動車など、お金にできない財産は全て売却して分割する。など
違いが納得できさえすればどんな分け方でもいいのです。
ただ、実際にはもめてしまうことが多くなっています。
その場合には、調停(審判)や裁判で解決をするしかありません。
また、財産分与では、一方が財産を隠したり、対象となるはずだった財産を含めず分配してしまうこともあります。
計算方法を間違えて損をしてしまうことも。
財産の計算でもめそうなら、弁護士を入れることで公正に計算をしてくれるので、相談してみることをオススメします。
不動産の財産分与方法
持ち家がある場合には少し面倒に感じるかもしれません。
不動産がある場合には、売却して利益を分配する方法と売却せずに分配する方法があります。
売却する場合
売却する場合は簡単です。
売却した金額を分け合えばいいだけです。
売却しない場合
まずはどちらが取得するのかを話し合います。
同時に、鑑定してもらい評価額を出してもらいましょう。
評価額が出たら、取得しない方に対して差額を支払う形になります。
夫が取得する場合なら、以下の二つの方法があります。
- 不動産以外に財産がある場合には、妻には評価額の半分となる他の財産を渡す(さらに財産がある場合は半分に分ける)
- 他に財産がない場合には、評価額の半分となる現金を渡す
なお、共有名義になっていたり名義変更する必要がある場合には忘れずにおこないましょう。
住宅ローンがある不動産の分配方法
住宅ローンが残っている場合も、まずはどちらかが取得するのか、または売却するのかを決めてください。
売却する場合
ローンを清算して売却金が残るようなら残った売却金を2分の1で分けます。
売却後もローンが残ってしまう場合には、売却後に残ったローンを2分の1にして、それぞれが支払いをすることになります。
売却しない場合
まずは評価額を出して、ローンを除いた分を分配することになります。
具体的には次のとおりです。
購入金額 | 4,500万円 |
---|---|
ローン額 | 4,000万円 |
離婚時の評価額 | 2,300万円 |
ローンの残高 | 1,000万円 |
夫がローン付きの持ち家を取得し、分与の割合は2分の1とします。
① 家の持ち分 | 2,300万円×50%=1,150万円 |
---|---|
② ローン負担分 | 1,000万円×50%=500万円 |
①1,150万円−②500万円=650万円
家を取得する夫は、妻に650万を支払い、残りのローン1,000万円を夫が支払うことになります。
自動車や生命保険・積立保険などの財産分与方法
自動車や生命保険も財産分与の対象です。
自動車については売却して分与する方法と評価額を出して分与する方法があります。
売却しない場合
査定するか市場相場を調べて評価額を出してください。
評価額が200万円であれば、取得する方が2分の1となる100万円を現金などで相手に渡すことになります。
自動車ローンが残る場合
家と同様にローンを除いた分を分与することになります。
なお、名義変更の手続きや自動車税、自動車保険料、駐車場の確保などを考慮して分与するのが一般的です。
生命保険について
解約返戻金が発生する保険が対象となります。
財産分与をする時点での解約返戻金を出してもらい分けることになります。
その他、株式や国債、投資信託などについては、分与する時点での時価を評価して、分与の割合(2分の1など)に応じて分配します。
家具や電化製品はどうやって分けるの?
家具や電化製品は、新品や高級家具などは別ですが、それ以外は買い取ってもらうにしても数千円など、それほど評価されません。
そのため、夫婦で話し合い、使用を希望する方に無償で渡すケースが多くなっています。
年金の財産分与〜分け方に関する注意点
夫の年金も分与の対象になります。
ただし、対象となるのは、婚姻期間中の厚生年金または共済年金(標準報酬)の対象となる部分だけです。
基礎年金となる「国民年金」に相当する部分は対象となりません。
また、「厚生年金基金・国民年金基金」という部分も対象になりません。
このように、全ての年金が対象となるわけではなく、また、将来受け取る全ての年金が対象となるわけではありません。
婚姻期間や夫の勤続年数によって受け取れる金額も異なるため、詳しくは弁護士に相談してみてください。
退職金はどのように分けられるの?
すでに支払われている退職金だけでなく、将来受け取れる退職金も対象となることもあります。
すでに受け取っている退職金の場合なら、婚姻期間に応じて請求できます。
割合は2分の1です。
具体例
夫の勤務年数30年で婚姻して25年、退職金1,800万円の場合
1800万×25/30×1/2=750万
妻は750万円を受け取れることになります。
まだ退職をしていない場合、公務員や教員など確実に退職金が入る場合には請求が可能です。
なお、民間企業などで支給されるかどうかわからない場合には、計算ができないため、分与の対象から外れる可能性もあります。
将来の退職金の計算方法は、まずは退職金の満額を出してもらいます。
満額から婚姻期間に相当する額を算出し、分与される割合(2分の1)で計算します。
具体例
夫の勤務年数40年で婚姻して35年、退職金4,000万円の場合
4000万×35/40×1/2=1750万
受け取る時期については、退職金が入った時など、話し合いで決めることになります。
婚姻期間が長ければ長いほど離婚する際の財産分与額は大きくなる
若い時や子育て時期というのは貯金もそれほど貯められません。
長い期間をかけて財産は増えていくものなので、婚姻期間が長い方が離婚する際に受け取れる財産分与の額は大きくなります。
また、日本は年齢が上がると収入が増えるのが一般的です。
婚姻期間が長く、年齢を重ねてから離婚した方が、財産分与で受け取れる金額は増えることになります。
少し我慢してから離婚するというのも離婚後の人生で困らないためのポイントになります。
財産分与は離婚から2年で時効になる
大事
離婚後に請求すればいいやと離婚をしてしまう方もいますが、相手と連絡が取れない、相手が夫婦の財産を使ってしまう、というケースもあります。
どのように分配するか決めてから離婚しましょう。