セックスレスを理由に離婚できるのか?セックスは夫婦の義務!セックスレスを離婚原因と認めた判例 | ウルトラ弁護士ガイド
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子供を産んで家族を作りたいと夢見ていたのに、結婚してもなお関係をもってくれないなど。
また、子供を産んでからは、全く性交渉もなく、求めても応じてくれないなど。
勇気を出して相手に伝えてみたけど、「性交渉だけが夫婦じゃない」と言われて相手にしてもらえない方も多くいます。
セックスレスの悩みを抱えている方は意外といるのです。
ここでは、セックスレスを理由に離婚するポイントを紹介します。
目次
セックスレスで離婚できる??
いくら夫婦とはいえ、こればかりは一方的にどうなるものではありませんし、人に相談したくてもできない人も多いでしょう。
Durexという会社がおこなったセックス頻度の調査では、日本は41カ国中で一番低いです。
日本では、性交渉がなくても夫婦として円満に過ごせる、と考えている人が多いのもうなずけますね。
しかし、セックスレスを理由に離婚はできます。
ポイントは、セックスレスとなった背景や様々な事情です。
単に、「性交渉に応じてくれないから離婚してほしい」と言うだけでは、「それがなくても夫婦」「セックスレスで離婚だなんてありえない」などと相手にしてくれないと思います。
簡単に離婚に応じてくれるならそれでいいですが、話し合いで離婚できないなら、調停や裁判を利用するしかありません。
一度や二度断られたくらいでは認められない!
調停や裁判の場合、一度や二度断られたくらいでは離婚はできません。
お互いに人間ですから、気分や体調などで拒否したい時もあります。
数回断られたくらいでは、調停委員も夫婦としてもう一度やり直せないのか?などと夫婦円満のアドバイスをしてくるでしょう。
裁判でも、一年以上とか、数年にわたって拒否されているケースではないと認められるのは難しくなります。
ただ、話し合ってそれでも数年にわたり拒み続けられる場合には、認められる可能性は高くなります。
民法770条には、「その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき」という規定がありますが、性交渉の拒否はこれに該当します。
夫婦には性交渉に協力する義務がある!セックスレスを離婚原因と認めた判例
夫婦には、性交渉に協力する義務がある、とした裁判例を紹介します。
東京地判平成23年3月15日(平21年(ワ)第38347号・平22年(ワ)第693号。)
この判決で裁判官は以下のように述べました。
したがって,夫婦の一方が性交渉を開始したにもかかわらず,他方が合理的な理由もなくこれに応じないことは,上記協力義務への違反であり,不法行為を構成する。
夫のAが妻のBに性交渉を求めた場合、理由なく拒むことは義務違反ということです。
なお、合理的な理由とは次のようなことです。
- 傷病や高齢など、性交渉をすることが身体に危険である場合
- 妊娠中などで母体に悪影響を及ぼす可能性がある場合
- 結婚をするにあたり、性交渉をしないと約束して合意していた場合
「仕事で疲れていて性交渉に意欲がわかない」、「年齢的に性的能力がない」などの理由で拒否される場合もあるでしょう。
他にも、「自慰行為にふけっていて性交渉しない」、「実は同性愛者で拒否する」、「AVやポルノ誌にしか興味がない」など。
これらの理由は合理的理由にはならず、相手が性交渉を求めているにも関わらず拒み続ければ、離婚原因となり離婚が認められる傾向です。
このように、合理的な理由がないにもかかわらず性交渉を拒否することは婚姻生活において義務違反とされ、セックスレスを理由に離婚する事ができます。
セックスレスで慰謝料も請求できる?慰謝料を認めた判例
セックスレスは離婚原因となるため、慰謝料の請求も可能です。
実際に、500万円を命じた判例を紹介します。
[京都地方裁判所 平成2年6月14日]
妻が夫に対して慰謝料請求した裁判です。
夫の拒否理由は、妻が生理だったので出端をくじかれた、妻が疲労困憊の状態だったからしないほうがいいと思った、など自分に都合の良い理由ばかりでした。
裁判所は、
夫の主張に矛盾があること、夫婦のこれまでの経緯などからして、夫には性交渉をする気がなかったか,あるいは被告に性的能力について問題があるのではないかと疑わざるを得ない。
と判断したのです。
また、性交渉の拒否が原因となり離婚に至るまでの間の出来事によって、妻は多大な精神的苦痛を被ったとして、慰謝料500万円が相当だと認めました。
慰謝料の相場は数十万円から300万円
すべての裁判で数百万という慰謝料が認められるわけではありません。
慰謝料の相場は数十万円から300万円程度です。
婚姻期間や事情、相手の収入など、様々なことを考慮して決められます。
また、すべての裁判で慰謝料を認められるわけではありません。
拒否している側のみに一方的な理由があって拒否しているなどで、セックスレスによる精神的な苦痛を受けたと認められた場合だけです。
認められるためには、拒否されている期間のメモや拒否された音声テープなど、拒否されていることが客観的にわかるような十分な証拠も必要となります。
慰謝料請求が可能かどうかは、ケースによっても異なり、法律的な知識も必要ですので、弁護士のアドバイスを受けて検討してみてください。