知らない間に勝手に連帯保証人にされていた! 返済する義務はあるのか?連帯保証人になっていた場合の解決事例 | ウルトラ弁護士ガイド
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知らぬ間に連帯保証人にされてしまった場合。
600万払えっていうような手紙が、何の前ぶれもなく手元に届きます。
主債務者は親だったり、知り合いだったりかと思いますが、問題なのはあなたの名前が連帯保証人として記載してある事です。
保証人になった覚えがないのであれば、パニックになることでしょう。
しかし、債権者はそんな事などはおかまいなしです。
電話や通知で「支払え」と催促してくるでしょう。
「本当に知らない」と債権者に説明したところで、契約書や印鑑証明書などの書類が揃っていれば通用しません。
そこで、名前を勝手に使われたり、実印を知らぬ間に利用されてしまって連帯保証人にされていた場合には、嫌でも支払わなくてはいけないのか?
ここでは、覚えのない連帯保証債務の返済義務や逃れる方法について事例で紹介します。
目次
身に覚えのない連帯保証債務を支払う義務はあるのか〜借金を息子に押し付けた親
19歳 借金総額600万 父親に勝手に保証人にされていたケースです。
突然、なんの前触れもなく「600万払え」と書いてある手紙が、何の前ぶれもなく息子である太郎くんに届きました。
そこには、太郎くんが連帯保証人だと記載してあり、父親の借金の連帯保証人なっているという内容です。
太郎くんは、保証人になった覚えはありません。
父親に電話したそうですが、着信着拒されており、どこにいるかも不明で、何が何だか分からず困ってしまいました。
因みに、債権者は、連帯保証人がいる場合、主債務者だけでなく連帯保証人にも請求することができます。
請求する順番も関係ありません。
よって、主債務者に請求せずに連帯保証人にだけ請求することもできます。
とは言え、通常の場合は、まずは主債務者に連絡をして支払うように伝えます。
そして、主債務者から回収が困難になれば、連帯保証人に請求するのが一般的です。
連帯保証人の太郎くんに請求が来たということは、主債務者が払えない状態にあるのだと思います。
身に覚えのない連帯保証人の方にしてみれば、本当に迷惑な話ですし、身に覚えのないのですから、なんで私が?って感じることでしょう。
太郎くんも、「本当に知らない」と債権者に説明しました。
すると、契約書のコピーと印鑑証明書のコピーが送られてきたと。
太郎くんの実印が押されいるものでした。
父親に印鑑を貸した覚えもないから驚いたそうです。
しかし、契約書に書かれている字は自分の字ではなく、父親の字だったとのこと。
父親が勝手にやったのです。
債権者にもその事情を説明しましたが、「書類が揃っているから問題ない」と相手にしてくれませんでした。
そもそも、600万円という大金を19歳の太郎くんに払えはずもなく、無視することに。
しかし、どうしたらいいか分からなかったため、、職場の先輩に相談しました。
・無料で相談できるから市役所行って来い
・弁護士に相談したほうが早い
太郎くんはそうした方がいいのかもという思いはありましたが、
・弁護士とかって未成年の俺をまともに相手にしてくれるの?
という、不安があってなかなか相談にいけずにいたのです。
ところが、無視した結果、債権者から内容証明が送られてきてしまったのです。
しかも、通知書には、「7日以内に支払え」なんて無理な事が書いてあったり、「それをしないなら法的手段をとる」なんてことが書かれていました。
怖くなってしまった太郎くんは、もう弁護士になんとかしてもらうしかないと思い、相談したのです。
参考ページ:借金トラブルは自力で解決できる?〜弁護士の無料相談を活用して早期解決
弁護士に相談してみた結果!返済する義務について
弁護士からの回答は、
「それは無権代理行為ですね。たとえ親であろうがそのような行為は認められません。無権代理行為によって名前を使用されたあなたは返済する義務を負うことはないのです」
「結局、俺は親父の代わりに返さなくていいってことですか?」
「そうです」
それを聞いてやっとひとまず安心できた。
しかし、次のような事をしてしまっていたら、返す義務があると説明されました。
身に覚えのない連帯保証債務でも返さなくてはいけない場合がある
「債権者からの請求には応じて支払いをしてしまいましたか?」
「無視してたんで払っていません」
「1円もですか?」
「はい。」
「それなら大丈夫です」
「払っちゃうとまずいんですか?」
「はい。勝手に借金の保証人にされていた場合でも、債権者から請求されてその一部でも返済をしてしまうと、無権代理行為を追認したことになります。そうすると、請求されている全額の返済義務が生じます」
「なんですか、追認って?<」
「返済する義務があるということを、自分で認めてしまう、ということです」
なんと!
「だからさっき1円でも返してませんよね?って聞いたんですか?」
「そうです!」
太郎くん、危ないところでした!
もしも、1円でも払ったら認めてしまったことになっていたわけですから。
というのも、太郎くん、払った方がいいのかも、と感じていたからです。
「勝手にされたこととはいえ、とりあえず少しだけ返しておこうって・・・俺も少し返しておいたほうがいいかなって思ってました」
「そうですね、ですがそれは絶対にしてはいけません。」
これは大きなポイントです。
取り立てがうるさい場合、「少し払っておいた方がいいかな」って気になってしまう方は多くいます。
太郎くんのように、勝手に連帯保証人などにされている人がいたら、これは十分に注意したほうがいいです。
中には、「追認」の事を知ったうえで、しつこい取り立てとかをしてくる債権者とかもいると思います。
しつこい取立てにはどう対応したらいいのか?具体的な解決方法
支払う義務がないとわかったところで、何かしらの行動をおこさないと取り立てからは逃れられません。
そこで、太郎くんは実際に何をするべきか弁護士に尋ねました。
「それでどうしたらいいですか?無視しておけば大丈夫ですか?」
「それは違います」
「え?だって、本当に勝手にされたんですよ」
「それは分かります。借用証にはあなたの名前と実印が押されており印鑑証明もある。書類上の不備はありません」
「そんなの親父が勝手にやったと思うんですけど」
「それはあなたの言い分であって、それが事実かどうかを証明しなくてはいけません」
「なんで俺が?」
「あなたが嘘をついている可能性だってあるからです」
「は?先生は俺が言ってることが嘘だと?」
「いいえ!債権者を納得させるためには、証拠をしっかり示してこそ、あなたが言っていることが正しいと証明できるってことです」
「証拠って言っても・・・ないですよ」
「とりあえずは、内容証明で通知した方がいいですね。それでも請求してくるようなら、債務不存在確認請求をやるしかないでしょうね」
「なんですかそれは?」
「裁判です」
「え!裁判をやるんですか?」
「はい。それがよいかと思います。ただ、その前には内容証明です。債権者に対して、返済義務がない旨の通知をします。それで駄目なら裁判で争うという流れが良いかと」
「ちょっと待ってください。未成年だし馬鹿だし、裁判とか内容証明とか言われても・・・」
「難しいことは書かなくて大丈夫です。自分には請求されるような債務がないという主張を理由をつけてすればいいだけです。裁判はその次ですね」
「でも、内容証明でもダメなのに、裁判したってダメなんじゃ?俺の言い分が認められますかね?」
「筆跡が異なるので認められる可能性は十分にあるかと」
「認められるとどうなるんですか?」
「連帯保証債務は無効だという判決が出ます。債権者も認めざるを得ません。あなたへの請求が出来なくなります」
「俺は親父の借金に関係がなくなるってことですか?」
「はい。そうです」
「それ以外に方法は?」
「書類が揃っているため、連帯保証人から逃れる方法はないかと。とにかく、あなた自身から行動を起こさないと今の状況は変えられません」
連帯保証債務が無効だと証明するためにやること〜第一弾は内容証明
勝手に連帯保証人にされてしまった太郎くん。
「契約は勝手にされたわけだし、払う必要もなければ関係ない」と当然考えていました。
しかし、自分で「勝手にされたことだ」という証明をしないと、何も変わらない厳しい状況なのです。
そこで、内容証明を出すことに。
問題は内容証明に何を書いたらいいのか?
太郎くんの場合は、知り合いなどに相談して、文章を考えてもらったそうです。
書いた主な内容は、
・筆跡が異なること
・父親に実印を勝手に持ち出されたこと
・父親により印鑑証明を勝手に提出されたこと
これらによる理由から不当な請求であると説明しました。
最後に、この通知をもっていかなる債務も存在しない事を確認する旨を書いたそうです。
内容証明を弁護士にお願いすることもできますが、費用もかかるため、太郎くんのように自分でやれることはやってみるといいでしょう。
これで駄目なら弁護士にお願いして裁判することになります。
内容証明を出してから1週間後のことでした。
債権者からも内容証明が届いたのです。
「書類上不備はない」と主張してきて、支払いを求めてきました。
さらに、「給料の差し押さえをする可能性もある」という内容だったのです。
これ以上は自分では対応できないと思い、再び弁護士に相談することにしました。
自分で内容証明を出してダメなら弁護士に!弁護士費用と弁護士による対処
「相手が態度を変えないなら、裁判してしまったほうが早いかもしれませんね」
「先生にお願いしたいけど、費用はどうなるんですか?」
「弁護士費用ですが、経済的利益というのが基本になります。着手金と報酬金、実費になります」
「着手金と報酬金?」
「弁護士へ依頼する時に支払うお金を着手金と言います。
その着手金は、『相談者が弁護士へ依頼したことで得する予定の金額』を元に計算されます。
その他にも、弁護士への依頼がすべて完了した際に支払う報酬金というものもあり、これも『相談者が弁護士へ依頼したことで得した金額』を元に計算して支払うことになる。
ちょっと複雑ですが、2種類の報酬が発生することが一般的です。」
「俺の場合の経済的利益は?」
「600万円の借金がなくなるようにする依頼を受けますので、600万円が経済的利益になります。」
「弁護士費用はいくらになるんですか?」
「600万円を弁護士費用のベースと照らし合わせ着手金39万円、報酬金60万円となります。」
「そんなに・・・。」
「ただし、今回の場合には通常通り算出してしまうと費用が高額になり、相談者の方の負担が大きくなりすぎますので、金額を調整いたします」
「安くしてくれる?ということですか?」
「はい。着手金は民事案件の最低金額となる20万円、報酬金は半額の30万円で対応致します」
「それでも50万かかるんですか。でも、やらないと600万の請求をどうにもできないんですよね?」
「600万円払うことになりますね。私の方で委任を受けた場合には、裁判前に一度交渉をしてみますが、それが受け入れられないとなると裁判しかありません」
「分かりました。お願いします」
「弁護士費用でも値引きがあるなんて!意外だったな・・・」
異なる筆跡が決め手となって連帯保証債務が無効に!
委任を受けた弁護士は、債権者に対して交渉をしてくれました。
しかし、やはり相手は態度を変えません。
結果、すぐに裁判をすることに。
6カ月から10カ月はかかるかもしれないという説明でした。
とても長い期間のように感じますが、太郎くんは何もしなくていいので、判決を待つだけです。
また、弁護士が代理人になってからは、あのうるさかった請求もなくなり、太郎くんは日常生活を取り戻せました。
その後、弁護士からは裁判がある時には報告がきて、どのように進んでいるかを説明してくれました。
裁判所に訴状を提出してから約7カ月後のことです。
やっと判決が出ました。
裁判によって、太郎くんの保証債務が存在しないと認められたのです。
これで太郎くんに返済義務は完全になくなりました。
【参考ページ】
借金問題を得意とする弁護士事務所の一覧